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名和晃平 シンセシス [アート&デザイン]

東京都現代美術館で始まった企画展「名和晃平 シンセシス」を見てきました。

20110611 名和晃平シンセシス.JPG
PixCell-Elk#2 2009

Synthesis(シンセシス)とは化学用語で「合成」
名和晃平(1975年生まれ)は、「Cell」という概念をもとに多様な表現形式で独自の彫刻・空間の世界を生み出します。
彼の作品を見ていると、何がリアルで、どこが境界なのか、といった既成の固定概念が揺らぐ感覚に陥ります。

会場構成は次のとおり。

1. CATALYST
グルーガン(酢酸ビニールの固形スティックを電熱で液状に溶かしながら押し出す装置)で壁に直接描かれた網状の造形「Catalyst(触媒)」

2. PRISM
インターネットで収集したモチーフを虚像として彫刻化するPixCell(Pixel画素+Cell細胞・粒・器という意味の造語)シリーズの一つ「PRISM(プリズム)」
光の方向を二つに分けるプリズムシートを使用。

3. BEADS
非公開の検索ワードでネットからダウンロードしたモチーフの表面を透明の球体(セル)で覆い、PixCell(映像の細胞)に変換する「BEADS(ビーズ)」

4. THRONE
資本主義世界に現れては消える刺激のボリューム、その堆積を無人の「玉座(Throne)」として表現。
PCの画面中にVoxelデータとして存在する「仮想の粘土」を「触感デバイス」を操って彫刻した3Dデジタル造形。

5. POLYGON
全身を3Dスキャンしたポリゴン(多面体)データから、解像度の異なるハイポリゴンとローポリゴンを作成し、重ねてズラしただけの彫像「POLYGON」

6. VILLUS
混合させた発泡ポリウレタンの霧をモチーフに吹き付けると、表面の凸凹に微細なセルが付着し覆われることで、輪郭やテクスチャーは鈍磨していく。この表皮の柔毛Villus(ヴィラス)が伸び続けると、そのものの固有性は消え去り、意味や概念が薄まり、だんだんと不定形のSCUM(スカム)へと近づいていく。

7. DRAWING
水を吸収しない紙にグリッド状にインクを落として描いたドットのイメージ「Dot Painting」

8. GLUE
あるボリュームをグリッド状に区切り、その交点をすべてグルーガンから生み出されたドットに置き換える「Air Cell」
上下左右、同じピッチで整然と配置されたドットの集合。

9. SCUM
何かを沸騰/発酵させると液体の表面に浮き出る「灰汁(あく)」が「SCUM」
スポンジ状に発泡する表皮は厚みを持ち、一様に無表情なまま膨らんでいく。

10. MANIFOLD
「多様体」「多岐管」を意味する「Manifold」
「情報・物質・エネルギー」をテーマにした巨大彫刻。

11. MOVIE
グリッド状にインクを落として描いたドットのイメージをコンピュータに取り込み、レイヤーごとに回転するアニメーション「Dot-Movie」
「Air Cell」の視覚体験を二次元で表現する試み。

12. LIQUID
シリコーンオイル(無色透明の液体で、耐熱性、耐寒性、耐水性に優れ、水や一般の合成油に比べて、きわめて低い表面張力の値を示す。また、微量の添加で優れた消泡効果を発揮する)を発光させ、グリッド上に泡を発生させる「LIQUID」

短期間にこんなにも変化に富んだ表現を思いつくとは、その想像力に驚きです。

(二年前に、銀座のメゾンエルメスのフォーラムで開催された個展の様子はこちらで)

【おまけ】
同時開催の「TOKYO WONDER WALL 2011 入選作品展」(若手芸術家たちに発表の場を提供する公募展、今年で12年目)や「MOTコレクション展」も見ごたえがあります。

1階ロビーフロアには、ヤノベケンジ(1965年生まれ)による鉄や機械部品などを使った彫刻作品「ロッキング・マンモス」(2005年)に乗った「M・ザ・ナイト」(2006年)が展示されています。
20110611 東京都現代美術館3.JPG

東京都現代美術館のトイレもアート作品。
20110611 東京都現代美術館4.JPG
壁のタイルが大きな花柄を描いています。(マイケル・リン作)

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