ドナルド・キーン氏講演会「日本美術と自然」 [学び]
根津美術館 新創記念特別展 第一部「新・根津美術館展」に合わせて開催された特別講演会。アメリカ人の日本文学者、ドナルド・キーン氏の「日本美術と自然」を聴いてきました。(事前に往復はがきで参加申込み)
文章を読み、写真や映像で拝見することはありましたが、実際にご本人の肉声をお聞きしたのは初めて。根津美術館のB1Fにある講堂で間近に姿を拝見することができました。
1922年の日本生まれだそうで87歳。日本とアメリカで一年の半分ずつを過ごされるとのこと。昨年、日本人以外ではじめて文化勲章を受章されました。
耳は聞きとりにくくなっているようですが、口調はしっかり。あらかじめ用意された日本語原稿を読みながら話をされましたが、時おり笑いを誘うほど流暢な日本語。発音はアメリカ人っぽいのですが、日本語の語彙、文章力はさすがです。
話のテーマは「日本人の季節感、自然に対する思い」
日本人がごく当たり前のこととしてやっている手紙の冒頭に季節の挨拶を書くこと。(例えば、「紅葉の季節となりました。お元気でお過ごしのことと存じます」のような書き出し)
私たちは無意識に、常識としてやっていますが、キーン氏いわく、これは日本人独特の習慣で他の国では見られないことのようです。
さらに、季節の移ろいを自然に日常の中に取り入れているとも。
『古今集』の歌は春夏秋冬の順に並んでいて、梅の歌のあとに桜の歌が登場し、決してその逆はない、と。
西洋の詩集では詩人の生年順や名前のアルファベット順に並べられるのが普通。
演劇においても日本の能は季節に合わせて演目が選ばれるが、シェイクスピア劇やオペラは年中いつでも何の演目をやっても違和感がない。
日本人は一年に二回時期が来たら衣替えをし、食べ物も初物・旬を楽しみ、食器も夏はガラス器を使うなど季節によって替える。
また、日本では『源氏物語絵巻』のように文学と美術が合わさって一つの作品となり、相乗効果を生んでいる。
西洋では文章に挿絵が添えられることはあっても、絵に歌を添えることはないらしい。
そして、描かれる絵の中では人物の顔はみな似たり寄ったりである一方で、植物の葉は枯れた部分があったり虫食いがあったり描写が細かい。人物よりも自然のほうが詳しく描かれている。
日本では歴史的に天災(自然災害)が多く、それによる飢饉も起きたにもかかわらず、日本人は自然を憎まず自然を愛する国民である。
以上が講演の概要です。
常々感じていた、日本人は四季を大事にする国民である、ということを日本人ではないキーン氏に例を挙げて説明されて再認識しました。
気候のみならず、衣食住に四季のある日本は本当に美しい繊細な文化のある国だと思います。
【おまけ】
講演会参加のお土産。
美術館所蔵の国宝 燕子花図屏風(尾形光琳)などのハガキをいただきました。ラッキー。
ランキング参加中。よろしければクリックを→
文章を読み、写真や映像で拝見することはありましたが、実際にご本人の肉声をお聞きしたのは初めて。根津美術館のB1Fにある講堂で間近に姿を拝見することができました。
1922年の日本生まれだそうで87歳。日本とアメリカで一年の半分ずつを過ごされるとのこと。昨年、日本人以外ではじめて文化勲章を受章されました。
耳は聞きとりにくくなっているようですが、口調はしっかり。あらかじめ用意された日本語原稿を読みながら話をされましたが、時おり笑いを誘うほど流暢な日本語。発音はアメリカ人っぽいのですが、日本語の語彙、文章力はさすがです。
話のテーマは「日本人の季節感、自然に対する思い」
日本人がごく当たり前のこととしてやっている手紙の冒頭に季節の挨拶を書くこと。(例えば、「紅葉の季節となりました。お元気でお過ごしのことと存じます」のような書き出し)
私たちは無意識に、常識としてやっていますが、キーン氏いわく、これは日本人独特の習慣で他の国では見られないことのようです。
さらに、季節の移ろいを自然に日常の中に取り入れているとも。
『古今集』の歌は春夏秋冬の順に並んでいて、梅の歌のあとに桜の歌が登場し、決してその逆はない、と。
西洋の詩集では詩人の生年順や名前のアルファベット順に並べられるのが普通。
演劇においても日本の能は季節に合わせて演目が選ばれるが、シェイクスピア劇やオペラは年中いつでも何の演目をやっても違和感がない。
日本人は一年に二回時期が来たら衣替えをし、食べ物も初物・旬を楽しみ、食器も夏はガラス器を使うなど季節によって替える。
また、日本では『源氏物語絵巻』のように文学と美術が合わさって一つの作品となり、相乗効果を生んでいる。
西洋では文章に挿絵が添えられることはあっても、絵に歌を添えることはないらしい。
そして、描かれる絵の中では人物の顔はみな似たり寄ったりである一方で、植物の葉は枯れた部分があったり虫食いがあったり描写が細かい。人物よりも自然のほうが詳しく描かれている。
日本では歴史的に天災(自然災害)が多く、それによる飢饉も起きたにもかかわらず、日本人は自然を憎まず自然を愛する国民である。
以上が講演の概要です。
常々感じていた、日本人は四季を大事にする国民である、ということを日本人ではないキーン氏に例を挙げて説明されて再認識しました。
気候のみならず、衣食住に四季のある日本は本当に美しい繊細な文化のある国だと思います。
【おまけ】
講演会参加のお土産。
美術館所蔵の国宝 燕子花図屏風(尾形光琳)などのハガキをいただきました。ラッキー。
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たしかに季節に敏感な国民かもしれない・・・と思いつつ
便利になって忘れていることを思い出したりして反省。
Mailだと季節の挨拶なんて無視ですから、携帯世代には伝わらない
習慣になりつつありますよね。
自分のブログも大いに反省です、ありがとうございました。
by まるち (2009-10-22 07:29)
★まるちさん、食ではちゃんと季節感を感じて実践されていますよね。花梨酒、柿白和え、ミョウガ田楽…
by いっこさん (2009-10-22 08:22)
はじめまして、いっこさま。
私は赤坂在住の絵描きです。
ついつい内容に引き込まれて入って来てしまいました
ご無礼をお許しください。
わが家は今日は栗ご飯。
つられて、今仕事で描いてる坊やのキャラも、
栗にしてしまいました。
そういえば、昨日も晩にアンジェリーナのモンブラン・・・。
季節のうつろいを感じるのは
食べ物ばかりという不調法者でございます。
by マスオさん (2009-10-22 08:59)
★マスオさん、いらっしゃいませ。
栗ご飯、アンジェリーナのモンブラン、いいですねぇ。
私の最寄駅までの歩道には街路樹のイチョウの木があり、最近はあの独特の臭いを放つ銀杏の実が落ちています。翡翠色の実はおいしいんですけどね。
by いっこさん (2009-10-22 21:48)